「これからは風の時代」。働き方や人とのつながりを語るとき、この言葉を見かけることがあります。自由、情報、個人、軽やかさ。説明されるイメージは似ていても、何を区切りに時代が変わったのかは、少し分かりにくいかもしれません。

この言葉の背景には、2020年末の木星と土星の会合があります。およそ20年ごとに起こる出来事が、なぜ約200年という長い時代の話につながるのか。まずは、空で何が起きていたのかから見ていきます。
2020年末、空では何が起きていた?
2020年12月、木星と土星が夕方の空で非常に近づいて見えました。国立天文台の当時の案内では、最も近づくのは日本時間の12月22日午前3時ごろ。その時間は日本から見えないため、21日の夕方などが観察の機会と紹介されています。
地球から見ると二つの惑星がほぼ同じ方向に並び、空の上で近づいて見えたのです。仙台市天文台の解説によると、木星の公転周期は約12年、土星は約30年で、二つが接近する機会はおよそ20年ごとに訪れます。2020年は、見かけの間隔がとても小さい点でも注目されました。
木星と土星の会合は、占星術で「グレート・コンジャンクション」と呼ばれ、長い周期を読む手がかりにされてきました。「風の時代」を考えるうえでは、会合が起こる占星術上の位置にも目を向けます。
占星術でいう「風」とは
西洋占星術では、牡羊座や牡牛座など、12の区分を「サイン」と呼びます。これらをさらに火・地・風・水の四つの元素に分けたうちの一つが「風」です。双子座、天秤座、水瓶座が風に属します。
木星と土星の会合は、およそ20年ごとに起こる位置を長くたどると、主に同じ元素のサインで続く時期があります。これが約200年というまとまりで語られる周期です。2020年には風に属する水瓶座で会合が起こり、その後も主に風で続く時期への移行として、「風の時代」と呼ばれています。
そこから、風に結びつけられる言葉や情報、交流などの象徴を、社会の変化に重ねて読む解釈が生まれます。地の時代を財産や形のあるものに、風の時代を知識やつながりに対応させる説明も、その一つです。
2020年より前にも、「風」での会合はあった
ここで「約200年ぶりに風へ」という説明だけを覚えていると、引っかかる点があります。2020年以前にも、風のサインで木星と土星は会合していたからです。
占星術の専門サイトSkyscriptの会合表では、1980~81年の会合は風、2000年は地、2020年は再び風に分類されています。2020年が、長い期間の中で初めて風の会合を迎えた年、という単純な並びではありません。
| 時期 | 会合の元素 | 流れを見るときの注意 |
|---|---|---|
| 1980~81年 | 風 | 2020年より前にも風での会合がある |
| 2000年 | 地 | いったん地での会合に戻る |
| 2020年 | 風 | 以後の長い流れの転換点として語られる |
長い周期の境目には、このような行き来があります。「2020年から風」という説明は、風での会合がこの年に初めて起きたという意味ではなく、その先に続く流れの区切りとして使われているのです。
日本では、本や雑誌が暮らしの言葉として紹介した
天体の配置に詳しくない人にも、この言葉が届いた背景には、占星術家の発信や、一般向けの本、雑誌があります。2020年末の出版物を振り返ると、すでに仕事や人間関係の話として紹介されていたことが分かります。
講談社は2020年11月、yuji著『「風の時代」に自分を最適化する方法 220年ぶりに変わる世界の星を読む』を刊行しました。書名にも時代の転換を掲げ、仕事や生き方と結びつけた一般向けの本でした。
同年12月21日のmi-molletには、占星術家Keikoの「風の時代」を扱うインタビューが掲載されています。さらに、anan 2253号の編集後記からも、翌2021年に同じテーマが雑誌の占い特集で扱われていたことを確認できます。
出版物だけから日本語の「風の時代」の名付け親を一人に絞ることはできません。ただ、2020年末には、天体の周期を読む言葉が、複数の占星術家によって仕事や暮らしの話として紹介されていました。
星の周期を、暮らしの言葉に置き換えると
もとの占星術の話では、木星と土星がどのサインで会合するかを読みます。それが一般向けに紹介されると、「物を持つより経験を」「組織より個人を」といった、生き方を考える言葉にもなります。星の位置の説明から、価値観への提案へと話が広がっているのです。
ただし、天体の会合が起きたことと、そのために社会や個人の運命が変わるという主張は別です。働き方や人間関係の変化を、星の配置だけで説明することはできません。
次に「風の時代だから」という説明を見かけたら、星の周期の話なのか、書き手が勧める生き方の話なのかに目を向けてみてください。もとになった天体の動きと、そこに重ねられた意味を知ると、その言葉のどこに共感するのかも考えやすくなります。