「528Hzの音楽」って何が528Hz?配信作品と説明を調べてみた

「528Hzの音楽」って何が528Hz?配信作品と説明を調べてみた

音楽を探していると、「528Hz」という数字を見かけます。ピアノ、自然音、瞑想用の長い曲。「愛の周波数」と紹介されることもあり、静かな時間のお供に聴いている人もいるでしょう。

でも、メロディーには高い音も低い音もあるはず。曲全体が528Hzというのは、どういう意味なのでしょうか。

レコード会社や制作元の説明を読むと、手がかりは「調律」にありました。ただし、同じ528Hzという表示でも、作り方の説明には違いがあります。今回は配信作品につながる公式ページと研究論文を調べました。音源そのものの周波数測定や、聴き比べによる評価は行っていません。

528Hzは、まず一つの音の高さ

Hz(ヘルツ)は、1秒間に何回振動するかを表す単位です。音の周波数が528Hzなら、1秒間に528回の振動に当たります。

これだけなら、特定の高さの音を指しています。528Hzの単純な波形を鳴らし続ける音と、ピアノが旋律を奏でる「528Hz音楽」は、同じものではありません。

音楽では、楽器の音程をそろえるときに基準の音を決めます。よく使われるのは「ラ=440Hz」。この基準に従って、ドやレなど、ほかの音の高さも決まっていきます。

ここで基準を少し動かし、ある高さのドを528Hzに合わせる。そうして調律した楽器で演奏するのが、528Hz音楽の作り方の一つです。曲にはさまざまな音が登場し、その中のドが528Hzになる、ということです。テイチクのシリーズ解説にも、この方法が記されています。

「ラ=528Hz」にするわけではない

数字が並ぶと紛らわしいのが、432Hzとの関係です。

「432Hz音楽」は、ラを432Hzに合わせた音楽を指す例があります。一方、ここで説明している528Hz音楽はドが基準。数字をそのまま比べて「432から528へ、音楽全体を大幅に高くした」と考えると、話がずれてしまいます。

一般的な十二平均律で計算すると、ラが440Hzのとき、その上のドは約523.25Hz。ラを約444Hzにすると、そのドが約528Hzになります。528Hzのドは、通常の基準から少し高いところにあるのです。

※計算は「ラの周波数×2の4分の1乗」。ここでいうドはラより3半音上の音で、1オクターブ下のドは周波数が半分になります。432Hzをラの調律基準として扱う例は、2019年の比較研究でも確認できます。

十二平均律でラ440Hzに対するドは約523.25Hz、ラ約444Hzに対するドは約528Hzになる調律の比較図
十二平均律では、ラを約444Hzにすると、その3半音上のドが約528Hzになります。

作品の説明を比べると、どこまで分かる?

実際の作品では、528Hzはどう説明されているのでしょう。公式ページに購入・配信先への案内がある作品から、三つを見てみます。

作品 公式に紹介されている内容 説明から分かること
エイコン・ヒビノ『Seasons』 528Hzに調律したピアノとアコースティックギターによる作品集 調律に528Hzを用いる制作方法が示されている
エイコン・ヒビノ『LOTUS』 528Hzに調律したピアノと二胡による作品集 同じ528Hzのシリーズでも楽器の組み合わせが異なる
CROIX HEALING『Blue Static in the Air』 528Hzのソルフェジオ・アンビエント作品として紹介 528Hzを掲げているが、確認した紹介文では調律や音の重ね方の詳細までは分からない

出典:テイチクの作品紹介、クロアの新作発表。公式説明の要約であり、音源の測定結果ではありません。

二胡は、2本の弦を弓でこすって音を出す中国の楽器。ピアノとギターの組み合わせとは、音の響きも異なります。同じ数字を掲げた作品でも、聴こえる音楽まで同じになるわけではありません。

『Blue Static in the Air』は、2026年8月21日にApple Music、Amazon Music、Spotifyなどで配信開始と発表された作品です。アンビエントは、音の広がりや空間の雰囲気を味わうような音楽。紹介文も、長い余韻や静かな時間を軸にしています。

ただし、その文章から「ドを528Hzに調律したのか」「528Hzの持続音を重ねているのか」までは特定できませんでした。説明に書かれていない部分は残ります。配信開始の発表

『Blue Haze』を聴いてみる

『Blue Static in the Air』の1曲目「Blue Haze」(3分8秒)です。制作元が案内するYouTube音源で、作品の雰囲気を確かめてみてください。

YouTubeで「Blue Haze」を聴く / アルバム全10曲を聴く

「ソルフェジオ」「愛の周波数」は何を伝える言葉か

528Hzを調べると、「ソルフェジオ周波数」という呼び方にも出会います。ヒーリング音楽の紹介で、特定の周波数の組み合わせに使われる言葉です。テイチクの作品紹介では、396Hz、528Hz、639Hzなど九つの周波数が挙げられています。

「愛の周波数」も、同社のシリーズに使われている呼び名です。ただ、この名前だけで音の作り方が分かるわけではありません。「ドを528Hzに合わせる」という説明なら制作方法の話、「愛の周波数」なら音に託された意味や作品の世界観の話、と読んでいくと整理しやすくなります。シリーズ紹介

言葉にひかれて聴き始めるのも、音楽との出会い方の一つでしょう。そのうえで、どんな楽器を使い、何を528Hzに設定したのかまで読むと、数字の向こうに演奏や制作の工夫が見えてきます。

研究はある。ただし、何を測ったかを読みたい

528Hz音楽を扱った人の研究もあります。

2018年の論文では、健康な成人9人が、調律の異なるピアノ音楽を別の日に5分ずつ聴きました。528Hz側の条件で、聴く前後の唾液中のコルチゾール低下などが報告されています。コルチゾールはストレス反応に関わるホルモンです。

ただし、参加者は9人。短時間の変化を調べた研究です。また、一方の条件だけで聴く前後に統計的な変化があっても、それだけで二つの条件の差が証明されるわけではありません。この報告を、あらゆる528Hz作品の効果に広げて読むことはできません。Akimotoらの論文(2018年)

2026年には、大学生162人を、528Hz音楽、432Hz音楽、音楽なしの三群に無作為に分けた研究も発表されています。20分間の条件後、唾液中の一部のたんぱく質には群間差がありましたが、注意や認知の働きをみる課題の成績には有意な群間差がありませんでした。

これは、体の指標と課題成績を分けて読む必要がある例です。唾液の数値の違いを、そのまま「記憶力が上がった」と言い換えることはできません。音楽を聴かない群との違いには音楽全体の影響も含まれるため、528という数字そのものの役割を確かめるには、曲や音量などをそろえた比較も必要です。Bozokらの論文(2026年)

今回確認した二つの研究は、DNAの修復を調べたものでもありません。どんな効能の説明でも、元の研究が実際に測ったものまで戻ると、分かっている範囲が見えてきます。

次に聴くときは、曲名の下の説明も

今回の調査で確認できたのは、528Hz音楽の中には、ドの音を528Hzに合わせるという具体的な制作方法を示す作品があること。そして、同じ表示でも、紹介文だけでは作り方まで分からない作品があることでした。

次に作品を選ぶときは、曲名の数字に加えて、「何を調律したか」「どんな楽器や自然音が入っているか」を見てみてください。そこからピアノを選ぶ日もあれば、二胡や、旋律の輪郭が淡い音楽に手が伸びる日もありそうです。

小さめの聴きやすい音量で流し、音色や余韻を味わう。同じ528Hzという名前でも、ピアノの一音を追いたいのか、ゆったりとした響きに包まれたいのかで、選ぶ一枚は変わってきます。


掲載内容は確認時点の公式説明・論文に基づきます。